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カイがシラストルに城内を案内されている間、ヒンニィは自室に戻って待機していた。
「どうやら本日はレイ様ではなくて弟君のカイ様がいらしたそうですね。」
ナリアが紅茶を淹れながらヒンニィに話しかける。
辺りにはアールグレイの柑橘系のいい香りが漂う。
ヒンニィは机に突っ伏して紅茶の匂いを嗅ぎながら顔だけナリアに向ける。
「そうなの。は、初めて会ったよ。」
昨日、龍口の谷で会ったと言いかけて言葉を濁す。
昨日の出来事をすべて話をしたら、ナリアが卒倒するかもしれないと思ったからだ。
「…。あんまりレイ様に似てないかも。」
淹れたての紅茶を机に持って来てくれたナリアに向かってヒンニィが呟く。
確かに思い返せばダークブラウンの瞳はレイもカイも同じだが、印象がまったく異なる。
同じ色でもカイの澄んだ瞳にヒンニィを惹きつけられて吸い込まれそうな感覚を持っていた。
思い返すだけで、胸の奥が切なくなる。
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