163人が本棚に入れています
本棚に追加
定期的に谷底から煽るようにゴーッと鈍い音を立てて強い風が吹いてくる。
風が止み、ヒンニィは眼下に広がる谷底の風景を確認してみる。
100メートルほど先に小さく川が流れているのが見えるが、それ以外はゴツゴツとした岩肌と木の根が飛び出ていて時々そこから葉が生えているが、ヒルフィが身につけていた装飾品や衣類など手がかりになりそうな物は一切見当たらなかった。
ヒンニィは必死の思いで更に崖を降っていく。
ヒルフィの転落事故があったあの日。
ヒルフィはじめ警護の騎士など5名程の少人数での訪問の帰り、一行が国境のつり橋を渡り始めた時、龍が唸るような音を立てて強い風が吹いたかと思った瞬間、一行の真ん中にいたヒルフィと彼を乗せた馬だけが風に煽られてバランスを崩し、助ける間も無くそのまま谷底へと落下してしまった。
なぜ一行の真ん中にいたヒルフィだけが落下してしまったのか。
そして、一切の手がかりが掴めないまま3日もの日々が過ぎてしまったのか。
疑問ばかりが頭を過ってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!