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「聞きたい事、いっぱいあったのになぁ。」
ヒンニィは目を閉じたまま小さく呟く。
なぜ龍口の谷へいたのか、顔を合わせた事もないのに自分の名前を知っていたのか、本当に体が不自由なのか、どうして瞳を閉じると思い浮かんでしまうのか…。
体は疲れているのに妙に冴えている頭の中を整理するように、どこからか優しい風が吹いてくる。
「誰に、何を聞きたいの?」
優しい風と共に、耳元に聞きたかった声が聞こえて驚いてヒンニィは目を開ける。
するとそこには月明かりに照らされて穏やかな笑みを浮かべるカイの姿があった。
「わ、カイ様?!」
ヒンニィは驚いて横たわっていたベンチから飛び起きてスッと立ち上がり、ピンと背筋を伸ばした。
そんなヒンニィの様子をクスクスと口元を押さえて小さく笑いながら、カイは眺めていた。
「ちょっと散歩したかったから歩いてたら君を見つけたからさ。そんなに驚かなくてもいいのに。さ、座って。」
カイはそう言いながらヒンニィに再びベンチに座るように促す。
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