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動いた拍子に、ヒンニィの頭上にお団子状にまとめられていた長い黒髪がパサリと解けて顔にかかった。
この短い間に何が起きたのかわからないでいたヒンニィだったが、自身が谷底へ落ちて行くのをこの目の前にいるダークブラウンの瞳の青年が身を呈して助けてくれたのだとやっと理解したのと同時に、その青年の左腕が自分を抱きしめ岩壁に追いやられて、息遣いを感じられる程の距離に青年の顔がある事に気がついた。
「いやぁっー!!」
突然ヒンニィが叫びだし、顔を真っ赤に染めながら青年の腕の中から逃れようと暴れだした。
ヒンニィは王家の人間として育てられて教養や知識、武術などは身に付けてきていたが、親族などの身の周り以外の男性との接し方がまったく分からず、ただただ恥ずかしく、この場から離れたいという気持ちが襲ってきていた。
そんなヒンニィの気持ちなど分からない青年は突然暴れだした目の前の女の子の様子が不思議でたまらなかった。
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