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たどり着いた場所では、木造二階建ての家が燃えていた。
すでに何台もの消防車と救急車が来ていて、周りには野次馬が集まっていた。
俺はすぐさま、スマホで動画を撮り始めた。
勢いよく燃える家。
懸命に消火活動をする消防士。
放水と木が燃える音。
その時の俺は、さぞかし嫌な奴だっただろう。
これで俺も学校で自慢ができる。
有名になれると、浮かれていた。
ふと、スマホ越しに燃える家を茫然と見つめる40代ぐらいの女が見えた。
髪は寝癖のようなボサボサ頭で、格好はパジャマのままだった。
野次馬の誰よりも前で、燃える家を見つめていた。
その姿を見て、俺はこの家の持ち主なのではないかと思った。
俺は、そのパジャマ女の背中越しに燃える家を撮り続けた。
ふと、パジャマ女は俺の方を振り返った。
俺は慌てて、スマホを後ろに隠した。
睨まれても当然だろうと思ったが、パジャマ女は何故か嬉しそうに笑った。
その姿が、俺には背筋が凍るほどの不気味だった。
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