4人が本棚に入れています
本棚に追加
茫然と立ち尽くす俺や家族の前で、燃える我が家をただただ見ていた。
近所の誰かが知らせてくれたのか、遠くからはサイレンが鳴り響き、気づくと何台もの消防車が家の前を取り囲んでいた。
あー、まるであの夜に見た景色じゃん。
財布すら持たずに逃げたというのに、俺の手にはスマホが握られていた。
「こんな時でも、スマホは手放さずか」
俺は笑う事しか出来なかった。
いつの間にか、周りには野次馬が出来ていた。
ほとんどは近所の人だが、中には見た事もない人間までがいた。
そいつらは、燃えている俺の家に向かってスマホをかざしていた。
しかも、どいつもこいつも好奇な目で口元は綻んでいた。
俺は怒りが込み上げた。
燃える自分の家を茫然と見ている家族の横で俺が叫び出しそうになった時、視界に映ったのはパジャマ姿のあの女だった。
燃える家の前で、パジャマ女は立ち尽くしていた。
あの時は気づかなかったが、よく見ればパジャマ女は裸足だった。
それも、泥砂でかなり汚れていた。
異様さを感じた俺は、持っていたスマホでパジャマ女を撮ろうとしたが、それを見た親父は怒り殴られた。
「お前!!自分の家が燃えてるのに、何を撮ってるんだ!!」
俺はパジャマ女を撮ろうとしただけだが、その向こうは燃える我が家。
確かにそうだ……。
母は泣いていた。
最初のコメントを投稿しよう!