撮影

3/4
前へ
/4ページ
次へ
日も落ち帰宅した私たちは、別行動をとる。 私は一目散に自分の部屋へと戻る。演じるのは息苦しい。 影はビデオカメラを希望したが、私はCDプレイヤーとヘッドホンを希望した。 一人の時間がほしい。無心で居られる時間がほしかったからだ。 そんなプレゼントされたヘッドホンを乱雑に頭にかぶり、プレイヤーの開閉口のスイッチを入れる。 ロックやパンク、メタルなどジャンルなど関係なしに、いろんな曲が割り振りもなく適当に並んだ本棚から一枚を引っ張り出し、プレイヤーに差し込む。 今日の気分とかで選ぶ時もあるが、大体適当につかんだものを流している。 ・・・今日はクラシック系だった。 イラつき尖った心が少し和らぐようだった。 小一時間のCDをフルで聞き流し、落ち着いた心で私はリビングに戻った。 影は家族共有のパソコンで何かを作っているようだ。 私は影のアカウントパスワードを知らない。後ろから除くのは気が引ける。 だから私は影が何を作っているのかわからない。 横顔がニヤついているからきっと楽しいのだろう。 きっと、私には関係のないことだ。 そんなことを思いながらソファーに腰掛け面白くもない芸人の爆笑トークとやらをみている。 ぼーっと眺めていると、影が席を立った。 もうひとつの習慣を行いにいくのだろう。 小学校入学時からはじめた日記だ。継続して行うことができるようにと母が進めたものだが、私は小学3年生で筆を止めた。代わり映えのしない毎日を面白おかしく書くことができなかった。 よくもまぁ、書くことが尽きないものだとおもいつつも、とめたりはしない。 私にとめる筋合いはないし、とめたところで互いにメリットがない。 勝手にやってろ。といった感じだ。 いつもは30分くらいで戻ってくるはずなのに、今日は1時間たっても戻ってこなかった。 もう夕飯時だというのに。なにをやっているんだ奴は。 そんなことを思いつつも顔には出さず仕方なく呼びに向かう。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加