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たいへん信じがたいことにも、UPと同時に再生回数はウナギ上りに上昇していった。
どうやら、業界ではすでに絶滅したであろうこのアナログな古典的方法が、むしろ世間では新鮮であり、逆に本物っぽく感じられたらしい……。
「スゲー! 早くも100万回再生だぜ!? これで俺達、超有名人じゃね?」
「YO! ツーバーとして生きるのも夢じゃないね。テレビ局からも取材くるかも」
「まさか、こんなにも反響いいとはな……」
世間のその反応に、僕らは異口同音に驚きと喜びを素直に感じていた。辺田や那佐とは驚きの意味合いが少々違うが、僕にしても同様である。
「え? あの動画って辺田くん達が撮ったの?」
「すっごーい! UFOってどんなだった~!」
当初、ここまで反響が出るとは思わず、地道な広報活動として嘘の目撃談を吹聴していたため、動画が話題になると同時にクラスの女子達も黄色い声で食いついてくる。
「ああ、もちのろんよ。俺達が那佐のスマホで撮った本物のUFOだぜ?」
「なんかね、銀色の灰皿みたいのだったよ」
そもそも「人気者になる」ことが第一目標なので、辺田も那佐もそのことを黙秘することも話をはぐらかすこともなく、いつになく周りを取り囲む女子達にご親切にもペラペラと自慢げに語って聞かせている。
なんか、不必要な説明まで入っているため、嘘がバレないものか少々危機感を覚えなくもないが……。
「衿家くんも見たんでしょ!? 宇宙人も見た!? なんかされたりはしなかった!?」
「あ、えっと……遠かったから宇宙人は見てないかな。特になんかされたってことも……」
二人のように有頂天になったわけではないし、このありえない反響を素直には喜べなかったが、僕も女の子にチヤホヤされて、正直、うれしい気持ちがなかったわけではない。
ここまで話が大きくなってしまい、嘘を吐いている罪悪感と、それがいつかバレはしないかという不安感は拭えないものの、とりあえずはしばし、この偽りの優越感を楽しむこととしよう。
そういう風に考え直し、二人の超楽天的な友人を見習ってこの幸運を受け入れることにした僕であったが……
ところが、しばらくすると僕らの周りで奇妙なことが起こり始めた。
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