UFO(ウホ)から出たまこと

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 それは、ほんの軽い出来心からのことだった……。  僕は仲のいい学校の友人二人とUFOの偽動画を作成し、それを〝YO! TUBU〟という世界的動画サイトに投稿するという分不相応な悪戯を思いついた。  動機は「ただ人気者になりたかった」だけ。  別に僕らはオカルトマニアなわけでも、そんな動画の編集能力に長けているわけでもない。  にもかかわらず、昨今の流行(ブーム)にあやかって、UFOの目撃者としてチヤホヤされるばかりか、あわよくば〝YO! ツーバー〟として広告収入で一攫千金! などという甘い野望を抱いてのことである。  なので、偽動画を作るといってもPC上で動画編集ソフトを使って行うわけではなく、技術のない僕らの選んだ方法は「実際にその場でUFOの模型をピアノ線で吊るし、それをスマホでさも偶然見つけたように撮る」という、超ベタで、超アナログで、超低レベルな古典的方法だった。 「――ああ! なんだあれ!? もしかしてUFOじゃね?」  動画撮る係の那佐(なさ)が、いかにも大根役者な演技でそんな台詞を棒読みしながら、静まりかえった深夜の公園にスマホを構える。  その誰もいない、街灯の白んだ明かりだけが灯る公園の上空には、僕が釣り竿で吊るす銀色の灰皿がフラフラと揺れながら浮遊している。 「カァァァーット! よーし! いいだろう。いい演技だったぞ、那佐。衿家(えりや)もいい感じだった。さ、帰ってさっそくUPしようぜ」  この計画の発案者であり、勝手に監督を務める運びとなった辺田(へんだ)が、その気になって檄を飛ばすと、那佐と僕の下手クソなシロウト芝居を根拠もなく褒めたたえる。 「いい画が撮れましたね、監督! これはもう話題沸騰間違いないっすよ!」  その言葉にお調子者の那佐も役者を気取り、どこからそんな自信が湧いてくるのだろう? 諸手を挙げて辺田に賛同する台詞を口走っている。  こうして僕らの動画はなんの問題もなく短時間で完成し(こんな簡単な撮影で何か問題の起こる方がどうかしているが…)、すぐさまネットで全世界配信されることとなった。  自らの思いつきを自画自賛している辺田と身の程知らずな那佐はともかく、この低レベルな偽動画が果たして話題になるものか? いささか…いや、大いに疑問を抱かずにはおれない僕であったが……
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