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「なんかさ、今朝学校来る時、門の前を黒いトレンチコート来た怪しい男がうろうろしてたんだけど」
「ああ! あの黒い帽子にグラサンした黒尽くめのヤツだろ? 俺は帰る時見たぜ?」
そんな不審人物の目撃情報が、教室のあちらこちらからちらほらと聞こえて来たのである。
さらには……
「辺田、さっきさ、黒尽くめのヤツにあのUFO動画撮った生徒知らないか? って訊かれたんだけど、あんかヤバそうだったから知らないって恍けといたぜ」
「あたしも訊かれた! やっぱ怖かったから誤魔化して逃げたけど」
そんな不気味なことを言い出すクラスメイトまで現れ始めたのだ。
「もしかしてさ、おまえらが本物のUFO撮ってUPしちまったから、例のアメリカ政府の秘密機関だかなんだかが動き出したんじゃねえ?」
「あ、それだ! 確かに都市伝説でいわれてるような黒尽くめの格好だし、いわゆる〝黒尽くめの男達――M.I.B〟ってヤツ?」
………………いったい、どういうことだ?
僕は、その奇妙な出来事と、それに対するオカルト好きな友人たちの意見に頭を混乱させた。
僕らが撮影して公開したのはUFOでもなんでもなく、百均で買ったただのアルミ製灰皿である。
なのに、なぜそんなUFO事件の揉み消しに現れるという〝黒尽くめの男達〟が出てくるんだ?
まさか、そんなある意味UFOの専門家まで騙されるとはさすがに思えないんだけど……
いや、そもそもM.I.Bなどというものは都市伝説の中の存在であって、現実にいること自体、にわかには信じ礼れないと思うのであるが……。
「もしかして、あの灰皿がじつは地球上に存在しない金属でできた、ほんとは表に出しちゃいけないエリア51内仕様の灰皿だったとか?」
「んなわけあるか! こいつはきっと俺らの動画の出来が良すぎて、ヤツら本物撮られたと勘違いして揉み消しに来たんだぜ?」
だが、困惑する僕を他所に、那佐はアホウな妄想を、辺田は自信過剰な台詞を口走って疑問を抱くことすらない様子だ。
「と、とにかく、もう一度、撮った動画をしっかり見直してみようよ」
そんな思い込みが強いといおうか、自分に都合よく考え過ぎにも程がある二人を誘い、僕らは辺田の家のPCでUPした動画を改めて見てみることにした。
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