UFO(ウホ)から出たまこと

5/12
前へ
/12ページ
次へ
「――うーん……見事なまでにアルミの灰皿だね。しかも百均の」  しかし…いや、当然と言うべきか、やはりそこに映っていたのは僕が釣り竿で吊るすただの灰皿である。ピアノ線が見えないだけまだマシというものだ……。 「一般の視聴者はともかくとしても、UFOのプロともいうべきM.I.Bがこれを見間違うとは思えないんだけど……」  だが、そうして何か目新しい発見をすることもなく、もう何度となく見たその動画をシラけた目で眺めていたその時。 「おい! なんだこれ? 電灯にしちゃあちょっと変じゃねえか?」  不意に辺田が、PCの液晶画面を指さして頓狂な声を上げる。 「んん?」 「え、なになに?」  僕と那佐がその指先の指し示すものを見てみると、それは夜空に浮かぶ細長いオレンジ色をした発光体だった。  楕円といおうか〝葉巻〟のような形をしていて、ずっとそれは街灯の一つだと思って見ていたのであるが、そういわれてみれば、他の街灯が皆、白い蛍光灯だというのに、それだけオレンジ色というのもなんだか妙な話だ。  しかも、じっと見つめているとそのオレンジ色の街灯だけが微妙に揺れ動いているような気もする。 「あっ! み、見たか今の!?」  と、三人雁首揃えて凝視している内に、それは一瞬にしてパッ! っと夜空から姿を消した。 「ちょ、ちょっと巻き戻して今んとこ見るぞ! 確かに今、アレ消えたよな?」  慌てて辺田がマウスを動かし、その部分をもう一度しっかりと確かめてみたが、やはりそのオレンジ色の光は小刻みに揺れ動いた後に、瞬きする間もなく瞬時に忽然と画面から消え去っている。 「これ、どう見ても街灯じゃないよ! こういう感じの動き方って、オカルトの特番とかで見るUFOの動画そのまんまじゃない?」 「もしかして、俺達、知らない間に本物のUFO動画撮ってた……とか? しかも、葉巻型ってことはUFOの中でもいわゆる〝母艦〟ってやつ? それって、ひょっとして大スクープなんじゃね?」  思いもよらぬその新事実に、那佐と辺田は驚きの表情を浮かべ、画面を見つめたまま嬉々として色めき立つ。  二人のように騒ぎはしないが、もちろん僕も同様である。  ……そうか。それならばM.I.Bが揉み消しにやって来るのもことさら不思議ではない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加