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今の今までまるで気づかなかったが、まさか、こんなものがとれていたなんて……。
偽の動画を撮ったつもりが、僕らは知らず知らずの内に本物のUFOを撮影していて、しかも、気づかぬまま、それを全世界規模で配信してしまったのである。それも、葉巻型の母艦なんていう超レアなケースのやつを……。
「納得……」
目の当たりにした本物の超常現象に驚くよりも、僕は不可解なM.I.B出現の謎が解けたことに、なんだか胸のつかえがとれたような、とてもすっきりした気分を味わっていた。
「どおりで再生回数ガンガン上がってくわけだ。本物のUFOがこんなバッチシ映ってんだから反響デカいのもあたりまえだぜ」
「これはガチでテレビ出て有名人になっちゃう……かも?」
他方、楽天的な那佐と辺田はまた別の現象に対して「うんうん」と首を縦に振り、思いもよらぬ〝棚からぼた餅〟にますます妄想を膨らませている。
だが、すっかり失念していたが、確かに予想外の大好評だったのも、本物のUFO動画であったがゆえの反響だったに違いない。
那佐じゃないが、これは本当にテレビの特番で取材来る日も近いな……。
瓢箪から駒…否、嘘から出た真実な自分達のUFO動画に、僕も外見では冷静を装いつつ、内心ではその興奮を禁じ得ずにはいられなかった。
…………ところが。
事態はそんな暢気によろこんでいる場合でもなくってくる。
「――ん? ……ああっ! あれは……」
その翌日の夕刻、ふと二階にある自分の部屋の窓から家の前の道を見下ろしてみたら、電柱の影に隠れるようにして立ち、こちらをじっと眺めている〝黒尽くめの男〟が目に留まったのである!
黒のトレンチコートに黒のソフト帽、さらに夕暮れ時だというのにむしろ目立つ黒縁のサングラス……明らかに〝M.I.B〟を髣髴とさせる格好だ。
辺田や那佐が自慢げに吹聴しているので、あの動画を撮ったのが日本の高校生で、どこの学校の生徒なのかは容易に知れたことと思うが、さらにクラスメイト達が目撃したように学校周辺で聞き込みをし、ついに僕ら個人を特定して家にまでやって来たということか……。
こいつは、けっこうなレベルでマズイ状況かもしれない……M.I.Bの事件揉み消しってどうやるんだっけか?
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