涙の数だけ恋しくて

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「ねぇ、美子……その、今行っている作業、どれくらいかかるのかしら」 遠慮気味に問いかけてくる凛子を不思議に思いながらも、私は座ったまま後ろを振り返り、落ち着きがない親友と向かい合った。 「そうねぇ、あと二時間はやりたいかな」 「そんなに?!」 凛子が驚いた表情で返してくる変な態度の彼女を見て、私も首を傾げた。 そんな私の仕草を見て、凛子は必死で普通の顔を作っているように感じる。 「どうしたの? あっ、私に遠慮しているのなら先に帰ってくれていいわよ。まだ全然体調は安定してないでしょ?」 「そういうことじゃなくて……あっ……と、その……美子ってばいつも最後まで残っているじゃない? だから、今日くらいは早く帰ったら? ほら、この前も行きたいなーって言ってたじゃない。あの立ち飲みっていうお店に……!」 早口で言い切った凛子はなんだかとっても一生懸命だった。 そんなに私ってば機嫌が悪い顔をしていたのだろうかと思うくらいだ。
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