甘く熱い余韻と切ない現実

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「どうして黙っていた」 薄暗い店内は赤色のランプシェードがテーブルを照らしている。 その赤色の下で睨むこいつの顔は、なかなか恐怖心を煽られるものだった。 「そんな顔するなよー。怖いって。勝手に転職してたことだろ? 想像以上に忙しいとこでさ。言いそびれてたんだよ」 「それもだが婚約のこともだ。今日新規の案件で打ち合わせを兼ねてお前の父親と会った 時に聞かされた。正直、ショックだった。お前からは一言もなかったからな」 「まー、こんな俺でも色々とありましてねー。でも、もう平気だから。元気ってね」 「茶化すな」 鋭い睨みを利かせ、高柳は俺に真っ直ぐに強い視線を送ってくる。 この目は本気で怒っているということに、長年の付き合いからすぐにわかった。 これ以上怒らせると殴られかねないからふざけるのはもう止めにし、俺はお手上げの姿勢を作る。
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