甘く熱い余韻と切ない現実

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自虐的にそう話すと、高柳が難しい顔をする。 昔から身内には不完全な存在として扱われていた俺を知っているから、新しい場所からそんな待遇を受けていると知り、喜ばしいと感じてくれていると思う。 だけど、それと結婚の話は別だと今の高柳だったら言いそうなことだ。 「……相手の目的がお前の能力なら縁談は断ればいいだろう」 家庭的な愛情に目覚めた高柳にとって、愛のない結婚は到底受け入れない事実なんだろう。 俺だって正直、嫌悪感しか無い。 でも、兄も身内もほとんど親同士の繋がりで結婚した。 だから、どこかで俺もこんな道を歩むのだろうとはわかっていたんだ。 「しょうがないんだよ。転職の話はもちろん親も合意の上だけど、結婚は親同士が俺らの知らないところで勝手に進めたんだ。俺だってビックリしたっつーの。いきなり結婚しろだもんな。でも、こういう家に生まれたからには逃げられないんだってことは理解してたよ」
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