恋に落ちたら負け

甘く熱い余韻と切ない現実

彼女といい関係でいたかったのは、誰よりも俺自身が望んでいたことだ。
何よりも好きになった人とずっと一緒にいられる時間はなんて幸せなんだろうと思うことは、あの一夜で身体に刻み込まれるくらい痛感した。

でも、仕事も美子ちゃんも全部欲しいだなんて欲張ってしまっては、絶対にどれも中途半端になってしまう。
自分がそんな器用な人間じゃないことくらいわかっている。

仕事を選んで親に言われた通り結婚をすれば、彼女とは愛人関係になってしまう。
彼女を選べば、親に逆らってルールを守らなかったはみ出し者として共に苦労をさせ、迷惑をかけてしまう。
そんな中で俺についてこいなんて言える強い力なんて、俺は持ってない。

「だから、諦めるっていう選択肢しか残っていなかったんだって」

俺は苦笑いをこぼしながら、自分が抱えている感情の全てを含んで伝えた。
そんな情けない俺を、高柳は凝視して逸らさない。