恋に落ちたら負け

甘く熱い余韻と切ない現実

その強い目つきをまともに受け入れることができなくて、俺が近くにいた店員に次のドリンクをオーダーする様子を見てから高柳は煙草に火をつけ、口を開いた。

「どうして諦める必要がある。そんなに大切ならずっとそばにおいて、お前が守ればいいだけだろう」

高柳の言葉に、自分の眉がピクッと上がるのが分かった。
一番突っ込まれたくないところを言い当てられて、自然と眉間に皺が寄る。

「だって……美子ちゃんが俺なんかについてきてくれるかわかんないし、本気で好きになってくれるのかも……」

好意を伝えていた間、ずっと避けられていた。
そして、最後は俺の我儘から関係を持ったようなものだった。

だからあの夜、俺を受け入れてくれただけで満足できたはずだった。
でも、あの夜がきっかけで今でも彼女を引きずってしまっている。

落ちるところまで落ちる俺の暗い横顔を見て、高柳は煙草の煙と一緒に大きなため息を吐いた。