恋に落ちたら負け

甘く熱い余韻と切ない現実

「えぇー！！　マジで？！　お前ら結婚して二か月か三か月くらいしか経ってないんじゃ……それなのにもう妊娠って早過ぎないか？！　お前、どんだけお盛ん……！」
「黙れ」

その先を言おうとすると、高柳の手のひらで顔面を覆われて口を止められた。
渋々後ろに退き、座り直すと自然とため息が出る。

「身体のことも考えて、仕事も近々退職させる。斎藤さんにはまた迷惑をかけることになるな」

美子ちゃんの名前が出ると、息を呑もうとするのも一苦労なくらいな息苦しさに襲われる。
それを誤魔化すように、軽く笑いながら返事をした。

「あの子なら親友の幸せ話なら喜んで受け入れると思う。ほら、いい子だから」

彼女ならきっと、俺なんかよりももっとちゃんとこの二人を祝うだろう。
凛子ちゃんの妊娠を知った時、少しは俺とのことも思い出してくれるだろうか。
一度だけ繋がったあの時の夜を、思い出してくれたりするかな。