甘く熱い余韻と切ない現実

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高柳とそんな時間を過ごした一週間後の夜。 仕事を早々に切り上げて専属の運転手が待っている車に乗り込み、俺はある場所へと向かっていた。 「あー……ダルい」 「お願いですから悠美お嬢様の前でそんな態度を取らないでくださいね。あとで私が社長に監視不足だと叱られるんですから」 後部座席に乗って運転手兼世話役の後藤に小言を言われる。 俺の周りは小言を言う奴しかいないのかと思うくらい、口うるさい奴が多いと心から思う。 「しょうがねーじゃん。いくら婚約者とか言っても一週間に一回は必ず飯を一緒に食うってさー……多くね?」 「普通ですよ、普通。結婚生活が始まればこれが毎日になるのですから、相手の食の好みくらい把握しておいてくださいよ」 後藤の「全くもう、これだから坊は……」とブツブツと独り言を言う後ろ姿を見て、(この人も白髪が多くなったなー)とぼんやりと考えながら見つめていた。
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