甘く熱い余韻と切ない現実

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そして窓に映るオフィスビルの流れる明かりに視線を移す。 今日もまた物静かな雰囲気の中で高級フレンチとかそういう類だろうなぁ……と考えると、ウンザリする。 そんな考えの中、恋しくなるのは色んな人が騒ぐうるさい中で、冷たいビールを飲みながら単純な味付けのする料理を食べたあの日のこと。 こういう疲れた時に、無性にあの店に行きたい衝動に駆られる。 「なー、後藤。そのお嬢さん連れて立ち飲みとか行っちゃダメ?」 「んなっ……! 絶対にダメですよ! 何言ってるんですか! バカですか、あなた!」 肩を上げて怒る後藤の後ろ姿に聞こえない様に舌打ちをした。 「いったいどこでそんな店を覚えたんですか! 私は坊にそんな教育をした覚えはありませんよ!」と後藤は一人でいつまでも小言を繰り返している。 俺としてはせめてそういう場所がOKな子であれば、この先の人生一緒にいてもまだ救いがあったのになーなんて、軽い考えからの発言だっただけなんだけど。
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