甘く熱い余韻と切ない現実

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傷心に浸っていると日々の激務から本当に浅い眠りに入ってしまっていたみたいで、運転席にいる後藤から「到着しましたよ。起きてください」と大きめの声で目が覚めた。 「あー……もうちょっと……」 「いつまでも甘えたことを仰ってないでさっさと覚悟を決めてください。今日も迎えには来ませんので……意味はわかってますよね?」 「あっそ。じゃあ遊んで帰ろっと」 「坊ちゃん!!」 ハンドルを持ちながら、クラクションと同じくらいの大きな声で車内で吠える後藤の声をスルーして後部座席から降りた。 後藤の迎えにも来ないという意味は、俺と相手の関係もそろそろ……と期待しているのだろうけど、どうしてもそういう気分にならない俺は、紳士を装っていつも日付が変わるずっと前の時間に相手を帰している。 そして、車から降りて見上げる先には、首が痛くなるくらいの高層で煌びやかな高級ホテルが目の前にあった。
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