甘く熱い余韻と切ない現実

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それなら立ったままも疲れるし、向かい合わせになっている同じ一人用のソファに俺も座った。 今、俺の目の前で一生懸命にメールを作っているお嬢さんは林田悠美、26歳。 俺が今働いているソフトウェア会社を創設した会長の大切な孫娘だ。 この人と会う前に渡された釣書に書いていたのは、幼稚舎から大学までエスカレーター式のお嬢様学校を卒業し、つい最近まで語学留学のためにロサンゼルスで暮らしていたらしい。 その留学が終了してお嬢さんが帰国次第、俺達の親は俺達を結婚させようとしている。 それだけの情報だと、根っからの箱入り娘だと思っていた。 でも、実際に会ってみたら見た目はNo.1キャバ嬢のような容姿に、お嬢様とはいうにはあまりにもかけ離れている自由な性格。 初対面の時に、釣書とのギャップに言葉を無くしたくらいだ。 「はい、メール終わり。ご飯、行こー」 スマホをクラッチバッグに戻し、立ち上がると俺の腕を掴んで立たせようとする。
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