甘く熱い余韻と切ない現実

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彼女の行動にそろそろ慣れてきていた俺は表情を崩さず立ち上がると、お嬢さんは当たり前のように腕を絡めてくる。 日本を離れた生活をしていたせいか、この子のボディタッチはなにかと多い。 初めて会った時はテンション高く挨拶のハグをされて、周りにいた人間を驚かせていた。 「今日はフレンチね。パパに頼んでいいとこ予約してもらっちゃった」 「中華の次はフレンチね。あなたの食の好みは様々なんですね」 「だって美味しいものなら色々と食べたいじゃーん。恋愛だってそうでしょ? 飽きたら違うのを味見したくなるじゃない」 後藤に相手の食の好みくらいわかっておけと言われたから質問した内容が、全く別方向を向いて返ってきた。 こういう意味でこの子は本当に自由なんだ。 でも、この手の話題は俺にも心当たりはあり、苦笑いでしか返せない。 というか、親同士が決めたとはいえ、よく婚約者にこんな話ができるなとは思う。
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