甘く熱い余韻と切ない現実

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「別に隠さなくていーのに。翼も相当遊んでたってこと、知ってるんだから」 「はははは」 いったいどこでその情報を仕入れたのかと考えると、棒読みで笑うというリアクションしかできなかった。 多分、後藤あたりか? それとも父親がわざわざ暴露してくれたんだろうか。 嫌な汗を流しながら二人で並んで歩き、エレベーターホールへと着くと運よく来たエレベーターの扉が開く。 五、六人の男女がエレベーターから出てきて、俺達は横に身体をずらす。 「まっ、私は別に気にしないわよー。結婚しても私だって外で恋人作る気満々だし。翼だってそうしていいから。お気に入りの女の子とかいるでしょ?」 そう言われ、思い浮かぶのはあの子しかいない。 でも、思い出せば苦い感情しか湧いてこなくて、目を瞑り気分を落ち着けてエレベーターに乗り込んだ。 その時、すれ違いざまに身体と本能が覚えている甘い香りがすぐ真横を通って行った気がしたんだ。
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