赤いクレヨン

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ふーちゃんのお母さんは他のお母さんたちよりもずっと若くて綺麗だった。 チェックのひだスカートにハイソックスを履いて、女子高生みたいな服装で保育園に迎えに来ることもあった。 時々、大学生みたいな若い男と一緒に迎えに来ていた。 そのうち、ふーちゃんの地獄の絵の中の棒人間が2人になった。 「これ、ふーちゃんとパパ」 「ふーちゃんも地獄に行っちゃうの?」 「うん。パパと一緒がいいから。……でも、熱いかな?」 「熱いよ!」 じゃあさあ、と僕は立ち上がって、ふーちゃんの絵の上で青いクレヨンを構えた。 「いい?」 「うん!」 「ジャー!」 僕は青いクレヨンでふーちゃんとふーちゃんのパパの上に雨を降らせた。 「やったー!」 嬉しそうに笑うふーちゃんを見て、嬉しくなった僕もハハッと声を上げて笑った。 あの頃、僕らはクレヨン1本で夢を描けた。
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