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友達の方へ歩き出したふーちゃんの背中を見て、僕の心臓は駆け足を始めた。
あの頃のふーちゃんの夢は死んだお父さんのところへ行くことだった。
今はどうなんだろう?
お母さんと仲良くしている? 家に帰るのが辛くない?
訊きたいことはいっぱいあるけど……。
「ふーちゃん! 来週、一緒にコキアを見に行かないか? 今が見頃なんだ」
僕が呼び止めると、ふーちゃんは振り返った。スローモーションのようにゆっくりと。
「いいよ。真っ赤な大地、魁くんと一緒に見てみたい。LINE教えて」
嬉しそうに笑ってスマホを出したふーちゃんを見下ろした。
もう地獄なんかを夢見なくてもいいように。
今度こそ僕がふーちゃんを守ってみせるから。
赤いクレヨンで幸せな夢を描いてほしい。
僕の夢もきっとここから始まる。
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