きっとここから始まる

4/4
91人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
友達の方へ歩き出したふーちゃんの背中を見て、僕の心臓は駆け足を始めた。 あの頃のふーちゃんの夢は死んだお父さんのところへ行くことだった。 今はどうなんだろう? お母さんと仲良くしている? 家に帰るのが辛くない? 訊きたいことはいっぱいあるけど……。 「ふーちゃん! 来週、一緒にコキアを見に行かないか? 今が見頃なんだ」 僕が呼び止めると、ふーちゃんは振り返った。スローモーションのようにゆっくりと。 「いいよ。真っ赤な大地、魁くんと一緒に見てみたい。LINE教えて」 嬉しそうに笑ってスマホを出したふーちゃんを見下ろした。 もう地獄なんかを夢見なくてもいいように。 今度こそ僕がふーちゃんを守ってみせるから。 赤いクレヨンで幸せな夢を描いてほしい。 僕の夢もきっとここから始まる。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!