第2章 麩菓子と親衛隊たち

31/32
前へ
/77ページ
次へ
案の定全ての行為が終わって二人していちゃいちゃとシャワーを浴びて、送ってくよ、とさり気なく泊まる気はないことを伝えながら身支度を整えてると彼女はくるっとした大きな瞳を見張って、スマホを手にした状態で首を傾けて俺を見た。 「ね。…ID、交換しよ?そういうのって、嫌?」 嫌だ。とか言える強心臓な男ってこの世にどれだけいるんだろう。それが俺じゃないことだけは間違いない。 それにどうしても耐えられないとか無理ってほどではない、勿論。IDなんか別にどってことない。そのあと連絡を取り合ったり、約束を交わしてデートを重ねたりすることに較べたら。 まあ、ここは穏便に。俺は落ち着いた声でいいよ、とだけ答えて従順に相手に従った。この場は何とかこれで終わらせて、その後のことはまた改めて考えればいい。この子に不快な思いをさせるのは本意じゃない。今日のところは気持ちよく穏やかに別れよう。 彼女が必ず向こうから連絡してくるとは限らない。男からの連絡を意地でも待つタイプかもしれないし。会いたいと水向けられても研究が忙しいとか都合がつかない、とかのらりくらりと逃げてればそれだけで呆れられて終わることもあるし。     
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

139人が本棚に入れています
本棚に追加