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第2章 麩菓子と親衛隊たち
「いやぁ、久しぶりだねえリュウちゃん。大学の勉強は忙しいの?あれってなかなか卒業できないもんなんだねえ。もう何年通ってるんだっけ?」
燃料店を兼ねた米屋の爺さんが声をかけてきた。うちのばあちゃんより確かだいぶ歳上。腰は曲がってるけどなかなか元気だ。何より俺のことをちゃんと覚えてるのがすごい。去年のこの祭り以来顔を合わせてない気がするけど。
頭はまだしっかりしてるってことだな。俺は感心しつつ一応説明に努めた。
「大学は卒業しました。今はその上の大学院っていう…、専門分野の研究をしてるんです」
「ほお、頭いいんだねぇ。そう言えばお父さんも勉強はできたなぁ。小さい頃からここらじゃ神童って言われて有名でねぇ」
神童が聞いて呆れる。多分そうやって褒めそやされ、ちやほやされていい気になってたこともその後の人生に悪影響を与えたに違いない。他人の無責任な評判なんてかえって罪なもんだ。どう受け答えていいかわからず、俺は手持ち無沙汰に会議室用の長テーブルの上のペットボトルに手を伸ばし、栓を外して中のお茶を一口飲んだ。
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