第2章 麩菓子と親衛隊たち

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俺の好みを知ってるから、それとなくスタイルのいい大人っぽい子をってリクエストもしてくれてるらしい。大抵お、と思うような子が一人くらいは紛れてる。他の男連中はともかく新井さんとはありがたいことに女の子の趣味が全く被らないからお互いの領分を食い合うことはない。まあ楽勝。それとなく水を向ければ結構な確率で向こうからも積極的になってくれる。その場限りの人当たりは俺も悪くない方なので、大抵は狙った子を落とすのに苦労はない。 ただ、問題は常にそのあとだ。 「…んっ、あぁ…、はぁ…っ、ん!」 女の子が身体をぶるぶると抑えきれないように痙攣させるのを何とか見届け、自分もやっと我慢してたものを放出する。…ああ。 この感触、久しぶり。やっぱいいなぁ、女の子とのセックス。 その日初めて会ったよく知らない子。でも生理反応のあとの本能的な愛おしさがこみ上げて抱きしめ、髪を撫で、キスを繰り返す。女の子も目を閉じてうっとりと余韻を味わってる。俺は間近で見ても綺麗なその顔を思わずまじまじと見つめた。 ああ、やっぱりこれが好きだ。めりはりの効いた抱き応えある身体と見惚れるくらい整った顔立ち。クリームとチョコレート、フルーツが山ほど載ったゴージャスで贅沢なスィーツそのもの。生まれついての甘党には堪えられない。 これなしで禁欲生活を何十年も送れなんて。とてもじゃないけど考えられない。隠れてこっそりケーキ屋に通って、また何度でも口にしちゃうと思う。 この子がパティシエが腕をふるった特別な期間限定スイーツなら眞名実は言うなれば駄菓子屋の麩菓子。それくらいの差がある。死ぬまで麩菓子だけで満足しろって言われても。 奢ったこの口は絶対に納得しないとしか…。     
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