第2章 麩菓子と親衛隊たち

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「ねえ。…椿原くんって、どこに住んでるの?一人暮らしなの」 余韻を楽しむ時間も終わり、すっきりと立ち上がって手早く避妊具を引き抜いて処理をする俺の背中によく知らない女の子が甘い声をかける。そら来た。ここからが駆け引きだ。俺は何気ない声で、でも慎重に答える。 「◯◯区のぼろい商店街。家、店やってるんだ」 「へえ!いいじゃん◯◯。結構高級住宅街だよね?」 相手の声が弾む。いつもここら辺から女の子が引くような適当な嘘を導入すべきか悩む。でも、どこに住んでる設定にすればいい?女の子がどん引きする地域ってどの辺?そこも今ひとつ確信がもてない。 「◯◯区も場所によるよ。うちんとこなんか古いばっかでごちゃごちゃしてるし、全然高級じゃない。…ばあちゃんが今店やってる。うち、大所帯でさ。狭い古い家に家族みっちみち」 相手の反応により嘘八百に加速がつく。とにかく家とかに興味を持たせたくない。てか。 この場でこの関係は終わりでいい。って思ってる鬼畜な俺。ワンナイトで何が悪い?合コンって本来そういうもんじゃないの? でも、女の子はますます背後で身を乗り出す。     
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