第2章 麩菓子と親衛隊たち

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「大家族、いいなぁ。あたし、憧れがあるんだ。賑やかなおうち。…ね、今度、お店にお邪魔しちゃおかな。何屋さんなの?お買い物に行ってみていい?」 ちょっとやばい雲行き。店(というか家)に来られるのだけは真っ平ご免だ。そんなプライベートな空間にこの子を立ち入らせる気はない。 参ったなあ。何とかそこから気を逸らせないと。俺はすっとベッドに戻り、有無を言わさず彼女を優しく抱きかかえて再び髪を撫で、キスをした。 「いやそれがさ。…うちのばあちゃんマジで性格きつくて。余所者嫌いで気難しいんだよね。母親もいびり倒されて参ってるんだよ、毎日。親父は酒飲みだしね。…ねえ、それより。まだ時間あるの?もう少し、続き。…しようか?」 「あっ、あん、そんな…。今いったばっかなのに…、は、ぁん…」 また発情し始めるその身体を宥めるように愛撫する。やれやれ、やっぱそうなるか。今日は上手くこのあと振り切れればいいんだけど。 そう、いつもここで思惑通りにいかなくて躓く。大体新井さんに根本的な原因があるんだ。つまり発起人が真面目に付き合う相手を探すのが目的、と言い切って憚らない合コンだってところにその元があるわけだけど。     
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