椿原さんちの押しかけ嫁・第１話

第２章 麩菓子と親衛隊たち

やってくる女の子の方も健全な目的というか。出会ったあとは彼氏彼女になる、という前提で参加するような子が集まりやすい傾向にあるみたいなのだ。男の参加者は理系の学生及び大学院生中心でみんな金持ってるとは言いがたい。でも、一般に名前の知れてるそれなりの大学だし。今現在の甲斐性のなさには目をつぶって将来に賭けようって女の子がどうも世間には一定数存在するらしい。俺なんかは将来の可能性も正直あれだけど。そんなこと向こうは初対面で判別できないもんなぁ…。
だからかわからないけど（ていうのは、新井さんに出会う前、研究室に入る前の段階の学生同士の合コンでもワンナイトで済む女の子なんかほとんど存在しなかった。一般に男の方が考えてるより女の子は出会いの場に健全なものを求めてるってのが実情なのかもしれない）。合コンでこうして出会った女の子と、その日のうちに最後の段階まで一気に到達することよりもずっと難関なのは
「どうやって後腐れなく交際まで持っていかずに自然にフェイドアウトするか」
なのだった。
大抵はこうやってのらりくらりとはっきりしない態度で逃げ切ろうとするんだけど。まああまりはかばかしい効果を発揮したためしはない。結果、一度だけの情事にとどまらず何となく曖昧な状態の交際がスタートする羽目になってしまう。今回はどうかな。まさか連絡先も交換せずに別れるってわけにもいかないだろうけど。
なまじ新井さんを介してるから嘘の連絡先を教えるとか鬼畜な真似もできない（だいいち目の前で『ふるふる』するのにどうやって小細工する余地がある？）。