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そう、考えてみれば。俺は気を取り直して元気を得た。最初は俺と付き合いたいと思ってくれる女の子たちも、大抵最終的にはどっかで愛想を尽かしてくれる、遅かれ早かれ。上手くすれば初めの頃ののらりくらりの段階で呆れて去るか。悪くすると何ヶ月もごたごたとやり合った挙句にもつれてもめて、何でそっちから連絡してくれないの、いつもわたしからだけじゃないのとか。最悪眞名実の存在がばれて修羅場になったことも…。
ホテルを出て女の子を送っていく道すがら、過去のしょうもないあれこれを思い出し内心でうんざりする俺。そんな心の内側を知る由もなく何となく幸せそうな雰囲気で俺の腕にしがみついて歩く彼女は、ふと顔を上げてきらきらする目をひたと見据えて囁いた。
「ね、また、会えるかな。…椿原くん、さっき。…すごい、よかったの。わたし、あんなの。…初めて」
言ってしまってから耳がぼっと赤くなり、俯く。さっきまで面倒だと思ってたのにそんなの一瞬吹っ飛んでしまう。可愛い。
俺は人目がないことを確認し、立ち止まってその顔を仰向かせた。唇を重ねる一瞬前にそっと甘い声で囁き返す。
「…俺も。すごく、よかった。…君みたいな子」
大好きなんだよ。という言葉の終わりは熱っぽいキスに呑み込まれて消えていった。
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