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殺される。そう思った瞬間、誰かが二人の間に入ってきた。
「朧くん! 大丈夫?」
「……野口さん?」
「ゼロ! この子は、零の敵じゃあない! この子は、俺の大事な友達だ」
野口は、自分達に向かって、サバイバルナイフを構えている零に向かって強い口調で叫ぶ。
しかし、そんな野口の言葉の中に、一つおかしな点があることに、朧は気がついた。
(ゼロ? それに、自分のことを零の敵じゃあないって?)
自分達の目の前にいるのは、野口さんから「零くん」と呼ばれていた女の子? いやか? 男の子。
けど、野口さんは、その「零くん」に向かって「ゼロ」とあきらかに違う名前で呼び掛けた。
そして、野口さんに「ゼロ」と呼ばれた「零くん」も……
「へぇ? あんたがその単語を言う? 一番、その単語を嫌ってた癖に? ふふふ? ハンターの目にも涙って奴?」
どういうこと?
朧は、野口の顔を覗き込む。
一方の野口は、ゼロの言葉に、少し動揺しながらも、
「でたらめなこと言うな!」
「……でたらめね? だったら……なんで、その子に教えてあげないんですか?」
「なにを?」
「またまた。貴方が……」
話の途中で、ゼロが自分達に向かって倒れ込んでくる。
「零!」
倒れ込んできた零の体を村瀬が寸前のところで受け止める。
「……村瀬先輩? 自分の顔になにか付いてますか?」
「なにも?」
「ところで……なんで、僕のことを抱きしめてるんですか?」
零は、自分の置かれている状況について村瀬に尋ねる。
「……誰かさんが暴走したと思ったら、俺に向かって倒れてきたんだよ」
「ごごごごめんなさい」
凄い早いで村瀬から離れ、申しなさげに頭を下げる。
「あの? それであいつ、今日は、何をやらかしましたか?」
「朧くんをサバイバルナイフで殺そうとした」
「ごごごごめんなさい。いつの間にか、意識を奪われてしまったみたいで」
村瀬に、向かって再び頭を下がる。
「気にするな! って! ゼロは、お前で、あってお前じゃあないだろう?」
「でも……」
確かに、ゼロは、自分のもう一つの人格で、「ゼロ」になっている時、自分には、その自覚どころか記憶すらない。
「あぁ! もう! 朧くんは死んでない! だから、お前はもう気にするなぁ!」
零の頭を優しくなでる村瀬。
「……村瀬先輩!」
「抱きつくな。それより、ここはいいから! 早く着替えてこい」
「はい!」
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