吾輩は¥である

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 カシャカシャカシャと軽い音を鳴らして、機械からトレイに次々と落とされる僕と仲間たち。  トレイに落とされたら、機械で列に整えられ、五〇枚一組で棒状のピニールフィルムに纏められる。  棒状に纏められた僕たちは、それぞれの配送先に仕分けされて、同じ地域に送られるもので振り分けられると、トラックに積み込まれた。  積まれているトラックからJA東京信連と表示されている施設に運び込まれ、そこから更に仕分けされて、軽自動車のバンへ改めて積み替えられ、軽バンに揺られて半日ほど経ったころ、東京都下のとあるJA(農協)の支店に降ろされた。  普通、配送された通貨は金庫に納められると思うが、僕らは補充の為に送られたので、金庫には入らず、そのまま貯金課窓口の女性職員の所に運ばれた。  他の仲間たちは、外回りの男性職員に預けられたり色々だった。  この日は、農協に貯金をしてくれたらもらえる、期間限定グッズが欲しくて来店する地元の住民が多く訪れていた。  他には、普段は外回りの職員が各農家を決められた曜日に廻って行くのだが、その職員が廻って来るより前に、急のお金が要り用になった地元農家の家族も、お金を引き出しに来たりしていた。  このころは金融機関への預金や貯金を引き出す時にも手数料がかかっていたので、だいたい支払いに細かいお釣が発生することが多かった。  引き出しで端数が出来たので、早速窓口の女性職員は僕らが棒状に纏められているビニールフィルムを持つと、机のカドに『ガンっ』と叩きつけてフィルムに傷をつけ、そのフィルムを剥がして、中に入っている一円玉をジャラジャラとバラし、その中から『チャカッ!チャカッ!チャカッ!』と小気味良い音を鳴らしながら、指先で必要な枚数だけ取っていく。  そして先にキャッシュトレイへ乗せられていたお札の上に、他の小銭と一緒に僕も乗せられて、キャッシュトレイごとお客さんの前にさしだされた。 「お待たせ致しました。こちらがお返しの金額で御座います。ご確認下さい」  女性職員がそう言うと、年配の男性は「どうも」と言ってキャッシュトレイの上にある僕らお金を受け取った。  こうして僕は、いよいよ広い世間に旅立つことになったのだ。
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