吾輩は¥である

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 そこからの運転手のおじさんは、常に巡行速度で高速を走って行ってるので、かなり安全運転ができるドライバーらしかった。  トラック運転手は、時間の計算が出来ない渋滞を嫌う。だからいつも交通量の少ない深夜を狙って長距離移動をするのだ。  僕がこの運転手のサイフに納まったのも、日中誰にもお釣りとして使われなかったという偶然があったからだ。もし昼間にお釣りとして使われていたら、この運転手と出会うこともなく、もっと近場でウロウロしてる生活を送っていたかも知れない。  結局、この運転手は東北最北端の青森県までやって来て、そこで荷物を下ろし、その営業所の駐車場のトラックの中で仮眠休憩をした。  ちょうどその頃、東の空が一面オレンジに染まり、そのオレンジの一番濃い箇所が、やがて燃えるような光を放ちはじめた。 「わぁ~、綺麗だなぁ~…」  思わずそうつぶやいていた僕。これから何度も見ることにはなるだろうが、これが、僕が生まれて初めて見た朝日だった。
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