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運転手は南へ帰る途中に東北最大の都市、仙台へ寄って、そこで東京向けの荷物を積み込み、更に南下して東京へ戻って来た。
東京の営業所で荷物を降ろすと、運転手はそのまま自宅に帰って奥さんが作ってくれた夜ご飯のような量の朝ごはんを食べ、風呂に入り、そして就寝した。
そのあいだ僕はずーっと財布から出ることもなく、運転手の起床を待った。
夕方になり運転手が起きると、直ぐに支度をしてご飯を食べ、奥さんからおにぎりを受け取ると、また会社へと出かけた。
これがドライバーの毎回のルーティーンなのだろう。
出社して今日の荷物とルートを確認する。今日の配送先は、九州最大の都市、福岡だった。
前日と同じように、周りが暗く成ってから出発し、途中サービスエリアの売店で軽く食事をして、その時も自分は財布から動くことがなかったので、そこから一気に西へ向かった。
九州に入ったのは、ちょうど朝焼けが綺麗な時間帯だった。
そこで荷物を降ろしたあと、ドライバーは地元の名物とんこつラーメンを食べに、長浜へ行った。
ラーメン屋と言うと、普通は内税方式にしてキリが良い値段だと思うが、この頃は消費税導入直後ということもあり、端数までしっかり計算した値段設定になっていた。
キリの良い値段に値上げして内税方式にするお店は、当時は便乗値上げだと批判されたりもしたので、この頃は外税で端数の値段で取るお店と、批判覚悟で内税方式なお店が混在していた。
運転手が入ったお店は外税方式だったので、五六六円、この支払いで僕は使われた。
このラーメン屋は観光客相手の有名店ではなく、長距離トラック運転手も口コミで知るような、地元の人に愛されるお店だったので、客は殆どが地元の人間だった。
ということで、この後この店からのお釣りとして僕はお客さんへ渡されたが、そのお客さんは地元の九州男児だった。
そのあと暫くは、この九州最大の都市で、人から人へのリレーを続け、大きく動く事なくチョコマカと移動していった。
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