第3章

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 ファイの仕事は多岐にわたる。紅耀が不自由を感じることなく生活するための全てを任されているからだ。紅耀が寝支度を整えてから目覚めの時間までがファイの自由時間と言っても過言ではない。  国の政策を語らうような場には出られないが、紅耀は会議の内容を余さずファイに教えてくれる。時には意見を求められるようなこともあった。もちろんファイが有益なことを言えるわけではない。それでも紅耀はファイに学び、考える機会を与えてくれた。  紅耀が私室に戻った後で残り湯を使わせてもらい、寝支度を整えると王宮の書庫から借り受けた本を読む。今はダグウッドの歴史や周辺国との関係の変遷について学んでいた。  おそらくファイがマグノリアに戻って国政を助けることはない。兄のディーが父親の跡を引き継ぐことは間違いないからだ。マグノリアにいた時にはそんな兄の補佐を出来ればと考えていたが、ダグウッドに来ることになり考えを変えた。  ファイはファイなりにダグウッドでマグノリアのために出来ることをする。そのためにダグウッドのことを学び紅耀の役に立てるようにと努力しているところだ。  いずれ紅耀が王となれば側近として働いてもらうと言われているが、今のまま身の回りの手伝いが中心となるかもしれない。それでも何かの時に少しでも紅耀の手伝いが出来ればいい。そのためにファイは夜の時間をダグウッドのために使っていた。  ファイの部屋は紅耀の部屋に一番近い場所に用意されている。そのため紅耀の部屋を訪れる者たちは全員がファイの部屋の前を通ることになった。
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