だって、あの店は

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「………今日も帰って来ないのか」 木製のテーブルの真ん中には俺の年に合わせた数の蝋燭が立てられてるホールケーキ、周りには生ハムのサラダやコーンスープと各椅子の前にステーキ、グラスか逆さに置かれている。 俺・水川レキは、本日十三回目の誕生日を迎えていた。……しかし、それは家族全員で、じゃない。一人だ。 ちなみに一人称は“俺”だが、俺はれっきとした女だ。間違えられたところで気にはしないが、一応説明しておく。 これを見たら、配膳を終えた途端に消されたのかと思われそうだが、決してそうではない。……我が家水川家はいつもこうなのだ。 母さんはホテル会社の社長で、仕事も打ち合わせが多く中々帰って来ない。毎年の事なので慣れたが。 まぁ、とりあえず食うか。手紙には『誕生日おめでとう、レキちゃん。直接祝えなくてごめんなさいね』と書かれてる。 ちなみに父さんは研究家で、こちらも忙しいとの事だ。……別に寂しくとも何ともない。
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