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その二人が店に来たのは、予約の時間ぴったりだった。
「いらっしゃいませ。ご予約の竜崎【りゅうざき】様ですね?」
「はい」
背の高い青年の傍らに、長い黒髪の娘がいる。
少女と言っても良い年齢かもしれない。
兄妹という可能性もあるが、雰囲気からして恋人同士だろう。
窓際の席に案内してメニューを置きながら、思い切って尋ねてみる。
「あの、もし違っていたら申し訳無いのですが……。以前にも当店へお越し下さいましたか?」
「あ、はい。予約を入れたのは今回が初めてですけど。何度か来た事がありますよ」
青年は人好きのする笑顔で続ける。
「覚えていてくれたんですか。最近はあんまり来ていなかったのに」
「蒼【あおい】が目立つからじゃない?」
少女が口を開いた。
見た目とは裏腹に、落ち着いた大人びた声の響きだ。
「そうか?有り難う」
「別に褒めてないからね」
仲良く会話を交わす二人から注文を聞いて厨房へと戻る。
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