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酒場は夜の雰囲気を潜めて、落ち着いた雰囲気だった。
カウンターの向こうに目当ての子がいた。
レイチェルちゃんは客がいない時、メイクや爪の手入れをしている。
しかも俺がいてもお構いなしで!…気を許してくれてるって事だよね!たまに空気のように扱われるけど…
全くこちらを見ようともせず、爪の手入れに夢中だ。
実際に会話をするのは初めてでドキドキする。
ゲームの中だとあんなに喋れたのに…
まぁ学生の時も女子と話す事なんて連絡事項だけだったからな。
…そう思うとなんか切ないぜ…
わざとらしい咳払いを一つしても、全く興味なさそうにされた。
しかし緊張している俺には全く見えていなくて軽く手を上げた。
「お、おはよう!」
「いらっしゃいませ、今日はどれにします?」
レイチェルちゃんは爪磨きを止めてマニュアル対応をしてきた。
くっ…好感度15%はあるから友達くらいになってるんじゃないの!?
しかしそのスマイル0円笑顔はとても眩しかった。
カウンター席に座り、太陽の紅茶を頼む。
…別に戦闘帰りじゃないからHP回復の飲み物を飲みにきたんじゃないが、さすがに何も頼まないのはレイチェルちゃんに悪いし…
俺はレイチェルちゃんに一生懸命可愛いリボンでラッピングしたプレゼントを渡した。
「レイチェルちゃん、これ…いつもの感謝のプレゼント」
「ありがとう」
さすがに実際は心の声は聞こえないが、売る事を考えてなけりゃいいなと思う…考えてるんだろうけど…
太陽の紅茶はアップルティーの味がした、見た目も赤くて似てる。
レイチェルちゃんはプレゼントを後ろの棚に置き素敵な笑顔で振り返った。
胸元まで伸びるフワフワの赤髪が美しい…
そして谷間が直視出来なくて赤くなり下を向く。
童貞丸出しで恥ずかしいが、幸せで頬が緩む。
「ついでに魚肉バター炒め食べてく?」
「食べる食べる!」
プレゼントを渡し、余計なものまで注文させられた気がするが…それでいいんだ。
だってこんな事じゃないとレイチェルちゃんの手料理が食べられないんだもん!
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