第1章・目が覚めたらMMORPG

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影踏みの短剣…売ってないから製作でしか手に入らず、滅多に出来ない希少価値がある使い捨て武器だ。 影踏みの短剣はグリモワールが作るからグリモワールの紋様が短剣に刻まれるが別名呪殺しと呼ばれる武器だ。 だからグリモワールにも他の属性の奴にも効く。 普段は影に刺し相手の動きを止める役割があるが、俺は影を操るから俺の攻撃も止められる……気になってんだろうな。 密かに微笑む。 さすがにこれは失笑する。 本気で俺を倒したいならもっと敵の情報を知っとけよ。 「この短剣、一本だけか?」 「あ?当たり前だ!この一本にどれだけの材料を消費したと思って…」 「足りないな、俺の動きを止めるなら100本はいるだろ」 ざわざわと周りの物の影が揺れる。 視界が薄暗くなっていき、影が大きくなり二人の男は震え上がっていた。 会話を除いて5秒くらいか、10秒もいらなかったなと考える。 俺は攻撃が始まってから一歩も動いていない。 地下はいい感じに暗くて俺のフィールドなんだよ。 大きく姿を変えた影がどんどん延びていき二人組に向かう。 「俺は影使いだぞ、自分の影しか操れないわけないだろ」 男達の影に赤く光る目が見えて、無数の腕が伸びてきて影の中に引きずり込まれる。 影なら他人の影でも操る事が出来る。 ずぶずぶと足を、身体を飲み込んでいき必死に抵抗して暴れている。 しかし、底がない地面から逃れる事は出来ない。 助けてくれと腕を伸ばしてきたが、俺は影踏みの短剣を床から引き抜いて放り投げた。 もがき苦しむ声はやがて小さくなり、姿と共に聞こえなくなった。 もう影はいらないなと、すぐにツカサの影と繋げる。 ツカサの影は俺の影を包み込んでくれて、暖かいとホッとしながら何もなくなった広場を後にする。 俺の特殊能力は他人や物の影を操る事が出来る。 便利のように見えるが、欠点がある。 影は光がないと身を潜めてしまう。 10秒持った奴がその弱点に気付き、それで戦いを挑んで来た。 とはいえ炎の魔術を出せば影を作れるし、俺は剣術もマスターしているから10秒で倒せる。 それさえあれば弱点なんてないようなものだから気にしてない。 …しかし、光が消えたら影が消えてツカサの寝顔が見れない。 俺の影がより強く活発化するのに、それでは意味がない。 一番の死活問題だ…よし、改良してもっと便利な影を作ろうと思った。
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