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与えられるものに、喜んでみせるのは得意だった。ぎゅっと抱いて、笑って、「ありがとう」を忘れずに。それの全てが嘘偽りではなかった。その人が、私に贈ろうと思い、ワタシノタメニ選んでくれたことは本当に嬉しかった。 私の選択をそのまま受け入れてもらえないことは、少しだけ不思議だった。心から良いと思ったのに、良くない点を次々挙げられ、踏みつけ、泥まみれにしてから、「好きに選んでいいんだよ」と言われることも。私はそれを、見たくなかった。胸に抱き、この心で大切に思い、選びたかったもの。泥まみれになったとしても、変わらない。見たくない。やめて。汚さないで。だから自然と、与えられることを待つようになった。 私の選択が受け入れられないのは、「良いもの」を選ぶ力が私に足りないからだと思った。自分は駄目なのだと。自分が駄目なのだと。「好き」になるものは「良いもの」でなければいけないのだと。それを私は選べなかった。「良いもの」を私は好きになれなかった。私そのものが、駄目なのだと思った。 好きじゃない「良いもの」が私の周りに増えていった。すがれるものが、なかった。怖いものに襲われた。逃げて、逃げて、やっとしがみついた相手は言った。「自分で決めなさい」。 この体のうち、私が自由にできる「私」は、はたしてどれくらいあるんだろう。考えたら、足元が浮くような感覚がした。
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