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ベッドに沈み込む体は鉛のように重くて、中々起き上がることが出来ない。まだキリキリと痛む胃に眉を顰める。
明日も仕事だ。また嫌な先輩の嫌味を聞いて、部長から営業成績が上がらないって言われて、営業先の社員に面倒くさそうな態度で追い払われるか無視をされるのだろうか。
確か子供の頃はヒーローになりたかったんだ。
でも現実はいまいちぱっとしない文具会社の営業。
毎日毎日、営業をしているこっちも利便性がいまいち分からない文具を売り込んでいる。しかも毎日終電近くまで残業な上に、時折定時近くに終わればやれノミニケーションだと連れ回される。
「仕事は人生の墓場です」
低反発枕に顔を押し付けながら、大きな溜息を一つ。
たまの休みには一日中寝て終わることもままあって、いっそ恋人でもいたらもう少し華やかな生活になるのだろうか・・・と夢想してしまう。
ゆらゆら。
意識が睡魔に飲まれていく。体の怠さが心地良さに変わっていく中で、何だか楽しい夢を見たような気がした。
次に目を覚ました時には部屋は真っ暗で、図らずも寝てしまったことに気がつく。近くに放り出していたスマートフォンの電源を付ければ、時刻は夜中の三時。
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