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俺は慌てて皺くちゃになってしまったスーツをハンガーに掛けて、カラスの行水でシャワーを浴びる。スウェットのパンツだけ穿いてから部屋に戻ると、テーブルの上には買ったまま放置していた中華丼がそのままの状態で置かれていた。
冷めきったそれに、何だかとても虚しさを感じて、そっと冷蔵庫へとしまった。
一通り寝る準備を整えて再度ベッドへ寝転がると、どん、と頭元の壁から音がする。何かをぶつけたのか、落としたのかといった音だ。時折聞こえてくるその音は、どうやら隣に住んでいる男が出している様だった。
顔を合わせたことはないが、俺と同じくらいの年代の男が住んでいると大家に聞いたことがある。
壁にぶつかってるのか、殴っているのか、はたまた物凄くおっちょこちょいで色んな物を落としているのかは分からない。しかしこうも夜中に音がするのは気になっていた。
毎日ではないから、特に気になるという程でもないのだが。
俺は何事も無かったかの様に寝転がりながら、ぼんやりと天井を見詰める。薄暗がりに慣れてきた頃には、俺はまた眠りに付いていた。
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