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「てめぇ、よくも!
この制服はなぁ! てめぇの一年間のバイトじゃ買えねぇくれぇ高級な制服なんだぞ!
どうして――」
はぁ、最悪。
僕は溜息を吐いて立ち上がる。 片手にはまだ半分以上が残っている紅茶。
「そう思うんなら汚さないように、家に引き籠もってたら?」
「あつっ!?」
言うが早いか、僕はそのヤンキーに紅茶を掛けた。
突然飛んできた紅茶に吃驚したのか、ヤンキーは彼女を離す。
解放された彼女は膝から折れるようにその場に頽れた。 余程怖かったのだろうか。
ヤンキーに睨まれるが、全く怖くない。
殺し屋の目で睨んでくる人間なんて、何人も見てきたから何ともない。
「あのさぁ、場を弁えてもらえる?
ここはティータイムを満喫する場所であって、出逢いカフェじゃないから。
まったく、こんなんじゃゆっくりティータイムすら楽しめないじゃない。
しかも、何そのダッサイ格好。 今時、色Tシャツに学ラン羽織って腰パンなんて流行らないから。そんなダッサイ格好で人の彼女に手を出そうとするのやめてくれる?それとも何?まさかお前、その格好で「俺イケてる」とか思ってるワケ?鏡ちゃんと見てんの?そんなプリン頭で迫ってこられても困るよね。染めるんならちゃんと徹底しろ、プリン野郎」
「ちっ、覚えてろよ、クソが!」
相手が口を挟む隙すら与えずに捲し立てていると、そのヤンキーはお決まりの台詞を吐き捨てて店を出ていった。
辺りはいつの間にか出てきた野次馬で騒然となって、少し五月蝿い。
僕はいつまでも座り込んで立つ気配のない彼女に目を向けると、手を差し出した。
キョトンとした顔で彼女はその手をじっと見ている。
「立てる?
さっきは悪かったね。ああでも言わないと引き下がらないから、ああ言うの。
怪我はない?」
「あ、あぁ、大丈夫・・・・・・です」
未だに茫然としている様な彼女の腕を掴むと、引っ張って立たせた。
並んだ彼女の背丈が意外に高くて驚く。
いつもは屈んでいたりある程度距離を取っていた所為か、彼女の方が低く見えていたみたいだ。
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