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店の裏側で言われたとおりに待っていたら、私服姿の彼女が出てきた。
店で着ているエプロンドレスとは違って、カジュアルな感じの服だ。
見慣れた私服姿も今はいつもと違って見える。
「お待たせいたしま、した」
いつものように拙い敬語で話し掛けてくる。
「あのさ、いつも思ってたけど敬語慣れてないよね?」
「えっ、いや、そんな事はありませんですよ?」
「既に言葉変だから」
「あっ」
敬語について指摘すると、彼女は顔を真っ赤にして俯いた。
何だかちょっとそれが可愛く見えたとか、絶対に思ってないから。
「まぁ、今はもう仕事終わったんでしょ?
じゃあ、敬語じゃなくても良いんじゃない?
年上に敬語話されるのも変な感じだしね」
「え・・・・・・?」
僕の言葉に彼女は目を見開く。
え、何でそんなに驚いてるのさ?
不審に思っていると、彼女は衝撃的な事を告白してきた。
「えっと・・・・・・オレ、一応13なんだけど?
つまり、アンタより2つ下・・・・・・」
「えっ?嘘でしょッ!?」
「ガチで・・・・・・あぁ、今年14になるから、厳密には一つ下」
年齢を聞いて、僕は衝撃を禁じ得ない。
彼女――Jが僕より年下だったなんて思わなかった。
顔立ちもそうだけど、身長も10cmくらい僕より高くて、落ち着いた雰囲気があったから僕より年上だとばかり思っていた。
年齢の事で衝撃を受けた後、もう一つの疑問が過ぎる。
「っていうか、何で僕の年齢知ってるの?」
そう、何で必要以上話したことのない彼女が僕の年齢を知っているのか。
ちょっと怖い。
「それは・・・・・・レイナスから聞いたから。
今日が誕生日だって事も含めて。
――はい、誕生日おめでとう」
そう言いながら、Jはスカイブルーの紙袋を僕に渡してきた。
それを僕は受け取る。
あぁ、何だろう、凄く嬉しく感じる様な。
でも、後でレイ兄は締める。
そんな事を思っていた僕の耳に、Jの言葉が更に続けて流れ込んできた。
「この前は、ありがとう。助けてくれて。
あの時はパニックになって、大した礼も言えなかったから・・・・・・。
これはそのお礼だ」
「――ッ、どうも」
微笑んだJの顔が紅く見える。それはきっと建物に遮られながら乱反射して光る夕日の所為だと思う。
この日から、僕とJはよく一緒に出掛けたりするようになった。
―― ――
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