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そこから話しだした鴫野さんの話は確かにちょっと奇妙だった。
まず見る夢は娘さんである灯里ちゃんが、真っ暗な背景の中後を向きながらしゃがんでいて、更には何かを探しているらしい。
その夢を毎年この時期になると見るらしく、最初はまた灯里ちゃんに会えたことを喜んでいたが、毎日毎日、毎年毎年同じ事をしている灯里ちゃんに段々と恐怖を覚え、実は私の事を恨んでいるとか、復讐しに来たと感じるようになり、今では寝ることが怖いらしい。
見ると鴫野さんの目には化粧でも隠しきれないくまが見えている。
「それで灯里が恨んでいる理由というか、私に何を言いたいのかを知りたくて……」
「いや、鴫野さん。灯里ちゃんが恨んでるなんてまだ決まってませんし、むしろ鴫野さんに何かお礼みたいな事を言いたいんじゃないですか?」
「……それだったらいいんですけど」
鴫野さんは相当参っているらしい。中途半端な慰めはむしろ逆効果かもしれない。
「あの、それで、灯里ちゃんが亡くなったのは何歳の時ですか?」
「8歳の時です」
という事は小学3年生か。
「家族で行った旅行先で……事故に遭って……」
「あ、いや、すいません。思い出せてしまって」
「いいの、ずっと覚えているもの、……あの時1人で遊びに行かさなかったら、灯里は……」
「すいませんすいません、……って大丈夫ですか!?」
遂に崩れる様に泣き出した鴫野さん。
しばらく泣くと、今度は化粧を直してくるわと扉の向こうに消えていった。
すると横にいる霞城が話し出す。
と言うかさっきからコイツ全然喋ってねぇな。
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