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「お兄ちゃんだれ?」
「俺か? 俺はな、クレハって言うんだ」
「クレハ? カッコイイ名前だね!」
「あ、うん。ありがとう……」
苗字なんだけどな。
まぁ、よく間違えられるから慣れているけども。
「君の名前は何ていうのかな?」
「私の名前は灯里! 鴫野灯里って言うの!」
「灯里ちゃんか、可愛い名前だね」
やっぱり少女は灯里ちゃんで間違いないみたいだ。
となれば、後は灯里ちゃんが何を探しているのかを聞くだけだ。
「灯里ちゃんはこんな所で何を探しているの?」
「え? 灯里、別に探してないよ?」
「探してないの?」
「うん! 探してたけどもう見つかったから!」
何だって? もう探していない?
じゃあこの子は今何をしているんだ?
もしかしてタイミングよく探し終えたのか?
「………」
「どうしたのクレハお兄ちゃん?」
「……ん? いや。何でもないよ」
「……? じゃあ、クレハもう暗いから帰るね」
「え? 何処に?」
「お家にだけど?」
この子まさか……。
「そうか……。気をつけて帰れよ」
「うん! じゃあまたね!」
そう言って公園の入口まで走っていき、出る瞬間に体はスゥーと消えていく。
「そんなとこ見てどうしたの? 灯里ちゃんは?」
「帰った」
「帰った!? どこに?」
こういう事はよくある。
特に子供は自分が死んだことを分かっていない場合が多く、事故だったり事件だったり急に死んだ場合は、幽霊になった後もああやっていつもの生活を振る舞う。
……もう何度も見てきた気がするけど、やはり目前にすると心がキツイ。気を抜くと雨にも負けないほど号泣してしまいそうだ。
「……今日はもう帰ろう」
「灯里ちゃんはどうなったの?」
「たぶん、まだだ」
そうまだ。
灯里ちゃんはまだ探し終わってない筈だ。嘘をついたのかそれともまだ探しものがあるのか、どちらかは分からないがまだ終わっていないことは確かな筈。
なぜなら公園を出る時に消えてしまったから。
幽霊は思いが強い場所に束縛される。もし本当に解決していれば灯里ちゃんは外にも出れたし、そもそもその場で成仏している筈だ。
「また明日、昼前に鴫野さんの家に集合でいいか? もうちょっとヒントが欲しい」
「別にいいけど……、終わったらちゃんと説明してよね」
「ああ」
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