-1-

4/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
霞城に連れて行かれた先は学内ではなく俺達もよく使う最寄駅。春休みで土曜日ということもありそこそこ人も賑わい、見るとうちの制服を着ている人もいる。 そんな人もたくさんいる中、俺達の部長霞城は堂々と掲示板、電柱、塀に至るまでそこらじゅうにビラを貼りまくる。 「おいおい」 もちろんその姿にドン引きしている人もいるが、ただ眺めているだけで止めに入ろうとする人はいない。 気持ちは分かる。 見てしまうんだよな、コイツの行動は。 なんて思いながら俺も眺めていたがそろそろやりすぎだ。 「霞城、幾らなんでも貼りすぎだ。春の祭りの広告が見えなくなってるだろ」 何をムキになっているのか阿修羅のごとく春の祭りのビラの上に貼り続ける霞城を引き剥がす。 「は、祭りなんて消えてしまえばいいのよ。どうせなら私は春の血祭りでも開催してあげようかしら!!」 「なに怖い事言ってんだ、ほら行くぞ。警察にでも見つかったら面倒だぞ」 一体霞城の過去にどんな祭りがあったのか。少し気になるが次の電車が着いたのか人もホームから降りてくる所で霞城を引っ張って連れていく。 「ちょっと! どこ連れてくのよ!まだビラ残ってるのに」 「こういうのはな、電車をよく使うサラリーマンや学生より、あんまり電車を使わない主婦がいる所に貼っておくんだよ」 「主婦がいる所って、どこよ?」 「そりゃ、……スーパーでしょ」 という事でやって来たのはこのスーパー。 学校から遠くなく、かつ住宅街も近くにある。そんなうってつけのスーパーがここ『タイヨウスーパー』である。 それにしても流石昼前、主婦が夕飯の食材にたくさん集まっている。 「うーん、確かにここなら誰か依頼してきそうね」 「だろ? 」 「クレハにしてはやるじゃない」 「にしては、は余計だ」 そんなやり取りの後、霞城と俺は店員にバレないようにこっそりと壁にビラを貼ったり、自転車で来ている主婦のかごに入れたりして、持ってきたビラ全てを配り終えることが出来た。 「ふー、疲れた。もう日も暮れてるじゃない」 「だな」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!