甘々に悪口を。

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 あの子と私は よく遊ぶ。だけど、親友ではない。  あの子のことを好きかと聞かれたら、割と好きな方だ。一緒にいて気を使わなくて済むし、互いに干渉しないから。……それでも、私は あの子とは親友になれない。    私と あの子は、去年の春。高校の入学式で出会った。同じクラスで、出席番号が前後。次第に話すようになり、好きなアイドルグループの話題で意気投合した。それから校内でも二人で居ることが多い。  放課後になると、二人で よく行くお気に入りのお店がある。甘いクリームの香りと香ばしい生地の香りが店内にいつも広がっていて、そこにいるだけで幸せに包まれる。同世代の女子にも人気があり、顔見知りに会うことも度々。カフェスペースも設けられ、ガールズトークに花を咲かせかるにはうってつけの場所なのだ。  今日も私たちは、この【 ラズベリーチェリー 】で、お気に入りのクレープの甘さに酔いしれていた。私は決まってチョコバナナを頼み、あの子はイチゴチョコを頼む。果物とチョコレート、そして生クリーム。これ以上に最高の組み合わせがあるだろうか。甘党の私はクレープのお供にミルクティーを、あの子はブラックコーヒーで口直し。  食べ終えた後に残るクレープの包み紙をクシャッとあの子は握り潰した。……「始まる」そう思いながら、私はゆっくりとチョコバナナクレープを口に運んでいた。
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